みんなわかってもらいたい

詞:谷口智也

誰だって云いたいことは
云いたいようには云えるさ
連中の陰に立って
周りを見回して歩くよ

大概はあんたになんか
慰められたくもないや
大概はあんたになんか
慰められたくもないね

こんなもんだって決めてしまえば
そういうことになってしまうんだろう
内臓の中に住んでやがる黒い虫が
白い歯を出して笑ってる
笑ってるんだぜ

青色のキャンバスに
白を塗りたくった
これは油絵だよ、きみ
油絵だよ、きみ

みんなわかってもらいたい
みんなわかってもらいたい
みんなわかってもらいたい
みんなわかってもらいたい
みんなわかってもらいたいんだ

*******

minimals「みんなわかってもらいたい」

この曲を作っていた頃は確か2010年の秋くらいである。
もうだいぶ古い。
その後のminimalsのすべての楽曲のプロトタイプにあたる曲である。
ギターに12カポを装着して適当にメロディを口づさみ、それを手元のメモ帳の走り書きで充てて唄って、反復に堪えるベースラインを付けたら楽曲の原型が生まれた。

当時の僕は、楽曲の歌詞や構成、コード展開を限りなく少なく排除したシンプルでコンパクトなものをやりたいと思っていて、「ワングルーヴで劇的ではないもの」を試行していた。
ギターロックバンドのウワモノギターのメロディありきのものや、そこから発展したような変拍子性のある音楽には興味が沸かなかったし、歪みの強いディストーションサウンドがあまり好きでもないから、スリーピースでギターを前に出すようなバンドでもないので(そして残念ながらその技量やモチベーションもない)、いかにビートを前に出すかということを考えていたのである。
そういう点で、以前から好きだったニューオリンズやブルーアイドソウルのサウンドにいよいよ傾倒し出した頃の楽曲で、あの感じをうまく自分のバンド内に落とし込めないだろうかと模索していた。
当時はそれが格好良いと思ったし、今もそう思っている。

ちなみにこの曲のレコーディングを終えてから少し経った後、Hall & Oatesの「maneater」を聴いたときには「まさにそれ!」と思った。
他の人がこの2曲を並べて共通性を見出すかどうかはわからないけど、僕の中では勝手に彼らと同じ創作アプローチをやりたかったのだと深く共鳴する部分があった(特にアレンジについて)。

歌詞については、今振り返ると忌野清志郎の「君が僕を知ってる」とか「わかってもらえるさ」に影響を受けていたのだなあと思う。
後で「あれ?似てるな」と思ったけど、もしかすると知らず知らずのうちに刷り込まれていたのかもしれない。
でもまあ音楽は往々にしてそうやって連なっていくものだと思うし、このよくある普遍的な「わかってもらう」という主題で振り向けられている世界観は清志郎さんのそれとはやっぱり違う(あちらの方がポジティブで潔いと思う)。

当時の僕はどちらというと歌詞の世界観は谷川俊太郎のようにしたくて、全体としてしなやかさや丸みがあるけど、しっかり根付くフレーズを組み込むということが意識にあった。
そうでないと、そもそもリズムに言葉が乗らないし、リズムが強すぎて聴いた後に言葉が何も残らないからである。
リズミックな曲を作るとこれが悩みどころになってくるが、というのも強い言葉を置かないとメロディがリズムに流されてしまうのである。

それで「みんなわかってもらいたい」という強い言葉(当然「みんな」には「全員」と「全部」の含意がある)のアイディアがまず最初にあって、筋書きとしてはそれを歌詞世界の中の「これは油絵だよ、きみ」というフレーズではぐらかしておいてから落着させるというのが僕のねらいだった。
その線で諸々推敲した結果(ここがミソかもしれないけど割愛)として、「あんたになんか慰められたくないね」とか「内臓の中に住んでやがる黒い虫が笑っている」という表現につながっていく。
そして結果的に「まっすぐひねくれた」雰囲気を醸したものを表現することができた。

ここで出てくる「連中」って誰ですかと聞かれたことがあったけど、正直作った本人もよくわからない。そもそも最初は「連中」じゃなくて「電柱」だったから、完全な語呂である。
(歌詞についての関連記事:歌詞についての四方山話

ビデオにあるレコーディングの音源ではせーので録ったバンドのオケに加えて、さらにハモンドっぽいオルガンとリードギター1本をオーバーダビングした。
サビではオクターブ下のボーカルがダブリングされている。
いずれも楽曲の基本ラインを補強するために彩りを添えたかっただけなので、聴く人によっては気付かないくらいの効果に留めてある。
使用したトラックはそれだけである。

エンジニアは瀧口和徳氏で、オケとボーカル録音をアナログテープで行い、それをプロツール上にてミックスした(氏はいまや数少ないアナログ録音経験豊富なエンジニアである)。アナログテープで録音をやりたかったのはそれをやったことがなかったので単純に興味があったことと、音質としてアナログ独特の詰まったウォームなサウンドが好きだったからである。
加えて本作の音圧は僕の意向で耳障りにならないよう低めに設定されていることなどもあり、今聴くと完全に時代と逆行しており、楽曲コンセプトも相まって大変にシュミシュミした音源になっている気がする。

また本ビデオの撮影は当時美大生のアートチームが行い、監修を次廣靖氏に行って頂いた(詳細はyoutubeのクレジット参照)。
企画の段階で、シンプルでコンパクトなものをというオーダーを出していたこともあって、背景はただただ白く、演奏を風景と慎ましく淡々と撮り、そこに影を使った演出が施されている。派手さは皆無で、今観るとまるで独特の静けさがあり、古武士のようなビデオである。
映像に映っている当時のベーシストは木村研一。

「みんなわかってもらいたい」への1件のフィードバック

コメントは停止中です。