ソリッドシチュエーション

詞:谷口智也

遠くて顔は見えないくらいだった
ちょうどそれでよかった
見るも見ないも同じくらいだったのだ

何をしようか どこへ行こうか
いつもの通り 思ったとおり

夢かどこかで出会っていたような気持ちになった
「ちょっと待ってくれ」っていう声がして
ちょっと待ってみるくらいの

君がいたのさ 隣を過ぎて
行き交うように 笑ったように

いつもの通り 思ったとおりに

(駅へ向かってゆっくり歩く
ここで行くよまたね 手を振って)

ウソでもホントでもどうでもいいよ

何をしようか
どこへ行こうか
いつもの通り
思ったとおり

覚悟はいいかい
涙は拭いて
いつもの通り
思ったとおりに

遠くて顔は見えないくらいだった
*******

古い曲ばかり解説しているので、たまには少し新しいものを取り上げます。

「ソリッドシチュエーション」という言葉は「状況設定もの」のホラー映画のジャンルを指すらしい。ソウとかキューブとかその辺の作品がソリッドシチュエーションものである。

僕がこの曲を作っていたのは2012年の秋くらいだったと思うけど、そのときはそういう言葉があることを知らなかったから自分の勝手な造語をタイトルにしたつもりだった。
ソリッドは「手堅い」「大事」「節目」というような意味合いで、それに「状況」や「境遇」を意味するシチュエーションを足して、「大事な局面」から「重要な何かが交差する場面」くらいの振り幅がある言葉だとイメージしている。

人の一生を何かで例えるとき、よくある説だけど僕は断然「旅」という例えがしっくり来る。
人の生き方や目的はそれぞれに違うし、誰の魂がどこから発生して、どこへ向かっているかなんてことを分かっている人はいない。
きっとみんなそれぞれに発生して、それぞれ勝手に歩いているんだろうと思う。
誰かの出発点は誰かのゴールで、誰かのゴールはまた別の誰かの出発点かもしれない。
それでみんなそれぞれ進んで、出会って、交差して、またすれ違っていく。

僕は音楽をやっているからかもしれないけど、そういう発想が自分には馴染む。

僕の大好きな井伏鱒二はこう言っている。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

なんだか言いたいことを言ってくれているような気がするんだけど、もしかしたら余計わかりづらくなったかもしれない。すいません。

さて、この曲では録音時にオーバーダビングを沢山施している。
特にこの曲では今までと違って、好き勝手に最大限までギターを足すチャレンジをした。
少ないコードとクリーンギターでどこまで楽曲に彩りが添えられるか試したかったのである。
ギターは4本くらいフェイザーっぽいトレモロをかけた空間的なギターを足していて、唄終わりのアウトロではギターのフレーズが絡み合ってフェイドアウトしていくようになっている。

ドラムの音はひたすらコンパクトに、デッドに作った。
ドラムのほとんどの箇所にミュートを施し、ミックスでもほぼノーリバーブ、さらにアナログテープのフィルターを掛けるなど徹底してある。

僕はこの曲ができたので、今まで自分の宿題みたいにずっとやってきた少ないコードの中であれこれ頑張るような曲は大体もうこれでいいのかなとそう思った、そういう曲である。